剣と日輪
「作家も、大変だねえ」
「楽な商売なんかないよ」
公威は、
「役人位なものさ」
と付け加えた。
「そうでもないぜ。僕なんか、こんなとこまで飛ばされてる」
「生きていくのは、楽じゃない。だからこそ、ラヴドリームを人々は求める」
「だから、君は書く」
「ガハハハ」
公威の笑きゃくが、店舗(てんぽ)内に鳴動(めいどう)する。二人は何軒(なんげん)か千鳥(ちどり)足(あし)で酒食(しゅしょく)し、津のネオン街を遊逸(ゆういつ)したのだった。
公威は八月に神島を再訪して最終チェックを済まし、九月に、
「潮騒」
を起稿。昭和二十九年六月十日に、新潮社から、
「潮騒」
は版行(はんこう)されたのである。
「潮騒」
は爆発的ヒットとなった。東宝が映画化し、谷口千吉監督、久保明、青山京子主演で封切られたのは十月二十日であった。
「潮騒」
で公威は第一回新潮社文学賞を、受賞した。初の文学賞授与に、
「今更(いまさら)」
という気(き)格(かく)であったが、嬉しくなくもない。
「楽な商売なんかないよ」
公威は、
「役人位なものさ」
と付け加えた。
「そうでもないぜ。僕なんか、こんなとこまで飛ばされてる」
「生きていくのは、楽じゃない。だからこそ、ラヴドリームを人々は求める」
「だから、君は書く」
「ガハハハ」
公威の笑きゃくが、店舗(てんぽ)内に鳴動(めいどう)する。二人は何軒(なんげん)か千鳥(ちどり)足(あし)で酒食(しゅしょく)し、津のネオン街を遊逸(ゆういつ)したのだった。
公威は八月に神島を再訪して最終チェックを済まし、九月に、
「潮騒」
を起稿。昭和二十九年六月十日に、新潮社から、
「潮騒」
は版行(はんこう)されたのである。
「潮騒」
は爆発的ヒットとなった。東宝が映画化し、谷口千吉監督、久保明、青山京子主演で封切られたのは十月二十日であった。
「潮騒」
で公威は第一回新潮社文学賞を、受賞した。初の文学賞授与に、
「今更(いまさら)」
という気(き)格(かく)であったが、嬉しくなくもない。