剣と日輪

　だった。萬代は力説した。
「我々は右翼でも左翼でもない。昨今の若者の闘争と言えば直ぐ共産主義、無政府主義運動だと思われがちだが、我々は違う。敗戦で米国の属国にされてしまった日本を憂い、再び独立国日本を取り戻す事を主眼にしている。日本帝国を地上に甦らせるにはどうすべきか、を考えていく、そういう趣旨の雑誌を創りたいのです」
　萬代の言説は、
「非武装中立し、侵略にはじっと耐えるべきだ」
　とか、
「国家権力は悪である。国家を無くすべきだ」
　等と愚論を展開し、騒乱を繰返す青年活動家とは異なる。公威は物静かな訥弁(とつべん)の萬代青年に、共感を覚えた。
　公威の政治思想も、
「日本の復権」
　のみである。それは、
「右翼」
　という色分けに収まる代物ではない。要するに、
「日本」
　をアメリカの様な主権国家に戻したいだけなのである。
　アメリカ人は自国民には、
「愛国精神」
　を叩き込み、
「強いアメリカ」
　を鼓吹(こすい)しているのに、衛星国日本の国民が同じ姿勢をとるのを禁忌(きんき)してしまった。中国や北朝鮮にしても、自分達は自国を愛しても、日本人が愛国行為をすると非難轟々(ごうごう)なのである。中国人は日中戦争に斃(たお)れた兵士を祀(まつ)るのに、日本の首相が靖国神社を参拝するのは許さないのだ。中国の内政干渉を又有難く聞聴(ぶんちょう)し、一緒になって政府を誹謗(ひぼう)し、
「首相の靖国参拝は違憲だ」
　と主張する共産主義者、無政府主義者は日本の文化人、著名人の中に多々居るのである。