剣と日輪
 公威は萬代と意気投合した。そして、
「青年」
 という未知数の可能性に、好感触を抱いた。それまで公威は、若衆(わかしゅう)といえば、全学連や革マル派といった不条理な連中ばかりかと、すっかり絶望していたのであるが、萬代のような新世代も芽生えてきている事実を知り、
「こいつ等となら、歩調を同じくし、昭和元禄の微温湯の中をふわふわと漂う日本丸を、確固たる港へ導けそうだ」
 と報国の使命に急進する礎(いしずえ)を得た思いだった。
 昭和四十二年になると、中辻も交えた三人で度々会合した。
「戦後の民主主義社会という虚構」
 に痛憤し、
「吉田松陰が誇った独立不羈(ふき)三千年の日本を、如何にしたら復活させうるか」
 を合議したのである。
 公威の政治意思は、次のような要点に集約できる。

一、
自衛隊の精神教育不足には不満である。
二、
現段階では憲法改正は必要ではない。
三、
現状の危機感を国民は理解していない。
四、
日米防衛の境界線を明示する。
五、
徴兵制度には反対である。
六、
現在の青年層には自制心や規律が欠けている。
七、
企業の体験入隊は経営者のエゴである。


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