剣と日輪
「君等の言わんとすることは理解できるし、否定もしない。だが私は、そのような長期的路線は全く考えていない」
「それはどういうことです」
 斉藤が食い下がる。
「成否は問わずってことですか」
 宮崎が問討(もんとう)した。
「私は国土防衛隊に命を懸けている。それだけである」
 公威は力説した。
「悠久の歴史の中で、捻(ね)じ曲げられた今の日本を正す。国民の心身共にだ」
 公威の語義を、二人は了解できなかった。
「民族主義者の最大の理解者で、指導者とも目していた三島先生が、現実社会とは別の哲学的世界の人だった」
 二人はそう解暁(かいぎょう)したのである。
 公威と日学同は、以来一線を画するようになる。公威の、
「国土防衛隊」
 構想を可とした日学同のメンバー、持丸博、伊藤好雄、宮沢徹甫、阿部勉等は脱退し、
「論争ジャーナル」
 グループに合流したのだった。
 
 公威は、
「国土防衛隊」
 創設資金工作に持丸等と駆け回ったが、協賛団体を得られなかった。
 そこで自腹で、
「国土防衛隊」
 を発足させる事にし、名称も、
「祖国防衛隊」
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