剣と日輪
「警察でも軍隊でもない、民兵。それが日本を共産主義者、無政府主義者の魔手から死守する」
 公威は叩頭(こうとう)した。
「どうか、国家万民の為、陛下を共産主義、無政府主義者から御守りする為、力を御貸し下さい」
 三輪、藤原、山本は公威の志に打たれた。山本が最終確認をすべくわざと、
「貴方はノーベル賞候補にもなっている、世界的に著名な作家です。態態実際行動の労をとらなくても、書く事で目的が達成できるのでは?」
 と公威の肚(と)裏(り)を探った。
「自分は書く事は捨てました。ノーベル賞には、興味はない。これからは武人として、生を全うしたい」
 公威は明答した。
「そうですか」
 公威と同じ四十代の山本は、震撼(しんかん)している。
「自分は、戦前戦後を通じて諜報活動という仕事に従事してきました。得たノウハウの全てを祖国防衛隊に注ぎ込みましょう」
 三輪も、
「防衛事務次官として、可能な限りの協力を惜しまない」
 と確約してくれた。
「有り難う御座います。皆さんの名を汚さぬ様、隊員一同邁進(まいしん)します」
 公威は、
「今夜スタート地点に、再び立った」
 と自覚した。軍医の誤診により、大日本帝国軍人として殉国できなかった二十一歳の弱弱しい青年が、二十数年を経て祖国に忠死できる舞台を与えられた気がした。
 それは公威にとって、
「花ざかりの森」
 への帰還だったのである。
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