剣と日輪
と自己卑下し、それまではしゃぐ事しか知らなかった必勝に、陰風(いんぷう)が吹くようになったのである。
この辛い経験から、全人(ぜんじん)たる亡き父母の許イコール死への、仄かな志向が芽生えていた。
死を前提にした青年の、一時の休養だった。牧子と旧交を温める時宜(じき)に恵まれたのは、少年時代の自分への告辞(こくじ)を済ませるいい機会でもあった。
そろそろ傷も癒えてきた二月二十五日に、日学同委員長斉藤英俊から電話がかかってきた。斉藤は勧誘した。
「三月一日より一ヵ月間、三島さんが主宰する祖国防衛隊の自衛隊体験入隊がある。森田、どうだ。参加してみないか」
「自分は今骨折してる。それに三月は日学同の新人募集が忙しいからって不参加の返事をしたばかりじゃないですか」
必勝は未だこの頃公威の、
「祖国防衛隊」
よりも、
「日学同」
への関心が高かった。
「それに、三島さんの祖国防衛隊には日学同は懐疑的だ。参加しても意味ないでしょう」
「それが事情が変わったのさ。参加予定の二十名の内中央大学の学生が、ストが和解して年度末試験の日程と重なってしまい、参加を辞退したんだって。欠員を埋めなければならないし、持丸先輩がこの際日学同と三島さんの間の擦違いを埋めておきたいんだって。志は同じなんだからな」
「ふうん」
必勝は欠員補充の他のメンバーの氏名を聞いた。
山本之聞
武井宗行
大石晃嗣
この辛い経験から、全人(ぜんじん)たる亡き父母の許イコール死への、仄かな志向が芽生えていた。
死を前提にした青年の、一時の休養だった。牧子と旧交を温める時宜(じき)に恵まれたのは、少年時代の自分への告辞(こくじ)を済ませるいい機会でもあった。
そろそろ傷も癒えてきた二月二十五日に、日学同委員長斉藤英俊から電話がかかってきた。斉藤は勧誘した。
「三月一日より一ヵ月間、三島さんが主宰する祖国防衛隊の自衛隊体験入隊がある。森田、どうだ。参加してみないか」
「自分は今骨折してる。それに三月は日学同の新人募集が忙しいからって不参加の返事をしたばかりじゃないですか」
必勝は未だこの頃公威の、
「祖国防衛隊」
よりも、
「日学同」
への関心が高かった。
「それに、三島さんの祖国防衛隊には日学同は懐疑的だ。参加しても意味ないでしょう」
「それが事情が変わったのさ。参加予定の二十名の内中央大学の学生が、ストが和解して年度末試験の日程と重なってしまい、参加を辞退したんだって。欠員を埋めなければならないし、持丸先輩がこの際日学同と三島さんの間の擦違いを埋めておきたいんだって。志は同じなんだからな」
「ふうん」
必勝は欠員補充の他のメンバーの氏名を聞いた。
山本之聞
武井宗行
大石晃嗣