剣と日輪
 は会場正面奥に、
「日学同」
 の旗を据え、七十名の学生に向ってテーブルが三つ置かれていた。
 開会宣言は必勝に任された。必勝はつかつかと会場の中心点に立ち、
「早稲田大学教育学部社会教育学科三年、森田必勝です」
 と名乗りを上げ、
「私は、日本の為に死ぬ覚悟です」
 と飄々(ひょうひょう)と怒鳴った。
 七十余名の参加者は悲壮感の無い殉国宣言に驚破(きょうは)された。必勝が顔色一つ変えずに開会宣言をしたので、どうする事もできなかった。
 公威は、
(好漢。だが余り死ぬ死ぬと口にするなよ)
 と親鳥のように必勝に心中アドバイスした。
 宮崎は、
(軽々しい)
 と必勝を苦々しく感じたのだった。
 三人の作家による講義が始まった。左よりサングラスをかけ、半袖の黒シャツの公威、黒縁眼鏡、ノーネクタイに背広を着込んだ林房雄、トックリセーターにジャケットの村松剛が着席し、林の前にはマイクがある。必勝は右端の机の左端に腰掛けながら、三氏の有意義な講義を聴聞し、時々メモった。
 林房雄の、
「大東亜戦争肯定論」
「緑の日本列島」
 村松の、
「ドゴール」
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