剣と日輪
　等は日学同学習会でテキストとされていた。テキストの著者の生の声を、
「愛国」
　の学生達は熱心に聞き入ったのである。
　取分け一番前でセミナーに参加している短躯の学生は、公威が語る、
「民族主義とは共産主義や無政府主義のようなわけの分からん理屈じゃない。世界中の人類が持つ素朴で純粋な心情なのだ」
　という解釈に、納得していた。明治学院大学二年の、小川正洋である。小川はこの日より公威を尊奉(そんぽう)し、後に側近となる。
「日本学生同盟セミナー全国合宿研修会・文化フォーラム」
　は盛況の内に幕を閉じた。この成功に自信を得た必勝は六月の、
「全日本学生国防会議」
　へ向けて直走った。
　公威は宮崎正弘から、
「全日本学生国防会議」
　が市谷の私学会館で開催予定で、初代議長には必勝が選出された、と報告を受けた。
「そうか、おめでとう。じゃあ参加させてもらおう」
　公威は必勝が議長に就任すると聞いて気分上々で、そう申し出た。
　講演を殆どやらない公威の意外な申し出に、宮崎は混迷(こんめい)した。当日の講演は当年三十四歳になる京都大学法学部教授高坂正堯(こうさかまさたか)の、
「日本外交の歴史的検討」
　と、京都産業大学教授で佐藤栄作首相の外交参謀ともいうべき、
「昭和の橋本左内」
　若泉敬の、
「核時代の日本の安全保障」

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