剣と日輪
 に確定しており、会議全体の構成もほぼ出来上がっている。
 宮崎はそう概説し、公威の出番が無いと釈明した。
「講演?私は講演等より、全日本学生国防会議の門出を祝福したいのだ。万歳三唱の音頭をとらせてもらえば、それでいい」
 公威はどうやら必勝の議長就任が、余程痛快らしい。宮崎は立場の違う、
「師弟」
 の花崗岩(かこうがん)の基(き)石(せき)を見せつけられた気がした。
(これはどうも、森田は何れ三島さんにとられてしまうかもしれない)
 目的は同一だが手段が相違する、日学同と祖国防衛隊である。宮崎は、
(森田を取られぬようにせねば)
 と公威に礼を述べつつ、そう用心していた。

 公威率いる祖国防衛隊と山本一佐の初対面は、滝ヶ原の普通科教導連隊で済ませている。山本が顔を見せた折、丁度祖国防衛隊員は千五百メートルの持久走の真最中であった。右足を引きながら訓練生の最後尾を四苦八苦走る必勝が、山本一佐の目に付いた。
(彼は怪我をしているのでは)
 山本一佐は赭(しゃ)汗(かん)を流す必勝と、彼を見守る作業服の公威を視野に捉えた。公威は愛育に満たされ、愛憐に耐久していた。
「今日は」
 公威は山本一佐に呼掛けられ、びっくりしていた。
「やってますなあ」
「はい。彼等の頑張りには脱帽ですよ」
 再び公威の目線は必勝に向った。
「彼は怪我でもしてるのでしょう?」
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