剣と日輪

「佐藤首相以下政府首脳がどういう対応を共産主義者・無政府主義者にとるか、己の目で確認しよう」
　という魂胆だった。
　山本一佐は都内に数箇所拠点を確保し、不測の事態にも臨機応変に臨める体制を構築した。
　そして十月二十一日月曜日となった。公威は楯の会隊員に平服を着せ、
「本日の情況を粒さに把握せよ」
　と下命して、市街各地に散らせたのである。
　前年の同日、ベトナム戦争反対の集会が各国で開かれていた。それを記念して、十月二十一日が、
「国際反戦デー」
　と銘打たれるようになったのである。
　反日共系全学連各派は、
「ベトナム反戦」
　というスローガンを旗印に、東京、大阪等大都市は勿論、地方でも武装し、騒乱を引起した。　又総評と中労連も、
「ベトナム戦争反対」
　を唱えて全国で統一行動をとった。
　共産主義・無政府主義者達は午前から国会議事堂、防衛庁周辺、銀座の繁華街、神田、御茶ノ水の学生街、麹町警察署前等で火炎瓶を投げ散らして火災を起こし、角材を振るって機動隊と激突した。都内の電車は不通となり、都民の平和な日常はカオスと化し、共産主義革命前夜の様相を呈してきた。
　公威は昼間山本一佐の部下に護衛されながら、御茶ノ水駅前に在る日本医科歯科大学学内で、共産主義者・無政府主義者と機動隊の激闘を観戦していた。催涙ガスや火炎瓶の煙硝に瞳を潤ませながら、荒れ狂う共産主義・無政府主義者達の闘撃を見据えている。