剣と日輪
宮崎も高柳もそう合点した。そして肌に泡立つ思いで、日学同の前途を慮(おもんばか)ったのだった。
必勝達数名は確かに、公威と酒杯を上げていた。それが何を意味するかは承知の上である。必勝は席上、月末に予定されている山本一佐の特別講義の話を聞き及び、
「楽しみですねえ」
と瞳を輝かせた。公威は、
「そうだな」
と満足気だ。
必勝は楯の会というよりも公威に、益々魅了されていた。
(俺は楯の会隊員として、生きるべきではないのか)
必勝は日学同という自己の一面に、疑問が湧きつつあるのだった。
十二月二十一日より山本一佐による、
「遊撃戦講義」
が品川の駅弁の老舗常磐軒の七階建製造工場の一階にある二十畳の従業員休憩室を講義室にして、開講された。楯の会隊員は、各々八時間に及ぶ、
「遊撃戦概説」
「図上訓練の遊撃戦闘一般要領」
「遊撃戦運用」
「遊撃戦闘要領」
の四講義を四日間ぶっとうしで受講し、白熱した山本一佐の授業に心身ともに浸かり切った。黒板に向う公威以下の聴講生達は、八時間を超過する集中講義に相当疲困(ひこん)した筈だった。併し音を上げる者はおらず、寧ろ山本一佐の方が疲斃(ひへい)しそうであった。
講義初日の昼休み、午前の講義で舌を嗄らし、食堂の戸を潜った山本一佐の鼻腔(びこう)を、常磐軒の豪勢な弁当の芳醇(ほうじゅん)な香りがついた。楯の会に対して山本一佐とその部下が行う特訓は、自衛隊の認諾を得ている。この為食費等が支給されていた。所が公威は、
「国民の血税だ」
必勝達数名は確かに、公威と酒杯を上げていた。それが何を意味するかは承知の上である。必勝は席上、月末に予定されている山本一佐の特別講義の話を聞き及び、
「楽しみですねえ」
と瞳を輝かせた。公威は、
「そうだな」
と満足気だ。
必勝は楯の会というよりも公威に、益々魅了されていた。
(俺は楯の会隊員として、生きるべきではないのか)
必勝は日学同という自己の一面に、疑問が湧きつつあるのだった。
十二月二十一日より山本一佐による、
「遊撃戦講義」
が品川の駅弁の老舗常磐軒の七階建製造工場の一階にある二十畳の従業員休憩室を講義室にして、開講された。楯の会隊員は、各々八時間に及ぶ、
「遊撃戦概説」
「図上訓練の遊撃戦闘一般要領」
「遊撃戦運用」
「遊撃戦闘要領」
の四講義を四日間ぶっとうしで受講し、白熱した山本一佐の授業に心身ともに浸かり切った。黒板に向う公威以下の聴講生達は、八時間を超過する集中講義に相当疲困(ひこん)した筈だった。併し音を上げる者はおらず、寧ろ山本一佐の方が疲斃(ひへい)しそうであった。
講義初日の昼休み、午前の講義で舌を嗄らし、食堂の戸を潜った山本一佐の鼻腔(びこう)を、常磐軒の豪勢な弁当の芳醇(ほうじゅん)な香りがついた。楯の会に対して山本一佐とその部下が行う特訓は、自衛隊の認諾を得ている。この為食費等が支給されていた。所が公威は、
「国民の血税だ」