剣と日輪
「うむ」
山本一佐は心情を曝け出さざるを得ない。但し、
(その心情を実行するか否かは別問題だ)
と己に言い聞かせながら。
「皇居に賊が押し入り、陛下の身に指一本でも触れたなら、見過ごせないでしょう」
公威の面貌(めんぼう)が、一気に綻(ほころ)んだ。
「ではその時、一佐殿の下で中隊長をやらせてください」
隊員達は必勝、持丸学生長が口火を切って次々に、
「じゃあ僕はその時、中隊の隊員をやるぞ」
「俺も」
「俺も」
「死ぬ時は一緒だ!」
等と気勢を上げている。
山本一佐は楽胥(らくしょ)する公威を睇(てい)視(し)しながら、
(この人は一中隊長として、国に殉ずることが本望なんだな)
と察した。
(本当は会を解散したいのだ)
山本一佐は己の半透明の決意を、自律の言葉として肚に収めた。そして平岡宅を辞すると直ぐ猟友会の知人中村に電話をかけて落ち合い、楯の会への協力を願い出たのであった。
昭和四十四年が明けた。元旦には楯の会機関紙、
「楯」
が創刊され、公威は、
「楯の会の決意」
山本一佐は心情を曝け出さざるを得ない。但し、
(その心情を実行するか否かは別問題だ)
と己に言い聞かせながら。
「皇居に賊が押し入り、陛下の身に指一本でも触れたなら、見過ごせないでしょう」
公威の面貌(めんぼう)が、一気に綻(ほころ)んだ。
「ではその時、一佐殿の下で中隊長をやらせてください」
隊員達は必勝、持丸学生長が口火を切って次々に、
「じゃあ僕はその時、中隊の隊員をやるぞ」
「俺も」
「俺も」
「死ぬ時は一緒だ!」
等と気勢を上げている。
山本一佐は楽胥(らくしょ)する公威を睇(てい)視(し)しながら、
(この人は一中隊長として、国に殉ずることが本望なんだな)
と察した。
(本当は会を解散したいのだ)
山本一佐は己の半透明の決意を、自律の言葉として肚に収めた。そして平岡宅を辞すると直ぐ猟友会の知人中村に電話をかけて落ち合い、楯の会への協力を願い出たのであった。
昭和四十四年が明けた。元旦には楯の会機関紙、
「楯」
が創刊され、公威は、
「楯の会の決意」