剣と日輪
山本之聞は、必勝を見詰めている。
「俺はそんな大層な人間じゃない。完成された単細胞さ」
必勝は一笑した。
「俺の大学生活は、日学同と共にあった。これには一片の悔いもない。日学同に在籍していたればこそ三島先生とも出会えた」
「辞めて、どうするんだ。楯の会に専念するのか?」
「否」
必勝は頭を振った。六名の内楯の会隊員は、必勝だけである。
「俺達は所詮一匹狼なのさ。新しい組織を立ち上げる」
「ほう」
山本之聞は意外だった。
「但しこの話は日学同メンバーには、伏せておいてくれ」
「じゃあ何て説明したらいいんだ」
「そうだな」
必勝は、仲間に助言を期待している。
「こういう場合」
小川が機転を利かして、識見を述べた。
「全学連や共産党なら、資本主義者か帝国主義者に魂を売ったって書きたてるだろうなあ」
「それだ」
必勝は、
「我々は共産主義者に魂を売り渡した、とでも説明してくれ」
と冗談とも本気ともつかぬ理由を提案した。
「そんなこと日本学生新聞に書いても、いいのか?皆から敵視されるぞ」
「かまわんさ。その方が後腐れなくて」
「俺はそんな大層な人間じゃない。完成された単細胞さ」
必勝は一笑した。
「俺の大学生活は、日学同と共にあった。これには一片の悔いもない。日学同に在籍していたればこそ三島先生とも出会えた」
「辞めて、どうするんだ。楯の会に専念するのか?」
「否」
必勝は頭を振った。六名の内楯の会隊員は、必勝だけである。
「俺達は所詮一匹狼なのさ。新しい組織を立ち上げる」
「ほう」
山本之聞は意外だった。
「但しこの話は日学同メンバーには、伏せておいてくれ」
「じゃあ何て説明したらいいんだ」
「そうだな」
必勝は、仲間に助言を期待している。
「こういう場合」
小川が機転を利かして、識見を述べた。
「全学連や共産党なら、資本主義者か帝国主義者に魂を売ったって書きたてるだろうなあ」
「それだ」
必勝は、
「我々は共産主義者に魂を売り渡した、とでも説明してくれ」
と冗談とも本気ともつかぬ理由を提案した。
「そんなこと日本学生新聞に書いても、いいのか?皆から敵視されるぞ」
「かまわんさ。その方が後腐れなくて」