剣と日輪

（誰にでも参る訳じゃなかったんだ）

　祖国防衛隊の本格的な始動は、四月からだった。毎週土曜日には皇国日本の歴史と哲学、国際国内政情を主眼とした学習会が開講され、毎日曜には基礎体力の維持増進を目的とした軍事教練が行われた。これ以外にも不定期で週二回英語と韓国語の勉強がある。
　必勝が公威に、
「祖国防衛隊を創立しました」
　と報告したところ公威は、
「パクリだな」
　と微かに笑い、
「両立できるのなら、パクってよし」
　と許容してくれた。メンバーの名を訊いた後、
「いっそ全員楯の会に入ったらどうだ」
　と提案してくれたのである。
「いいんですか」
「いいとも。持丸に話しとくから、未入隊の者に、持丸の面接を受けるように言い給え」
「有り難うございます」
　楯の会に属していない祖国防衛隊員野田隆史、西尾俊一、倉田賢司は論争ジャーナル編集次長で楯の会学生長である持丸博の面接を受けた。全員パスし、七月二十六日から八月二十三日迄実施された陸上自衛隊富士学校への体験入隊を、修了したのだった。
　この間公威は東京大学全学共闘会議主催の討論集会に出席してその内容を新潮社より、
「討論　三島由紀夫ＶＳ東大全共闘」
　という書名で出版して印税を東大全共闘と折半したり、フジテレビと勝プロ制作の大映映画、
「人斬り」
　に出演して、幕末のテロリスト田中新兵衛を好演したりして、繁忙を極めていた。