剣と日輪
(楯の会自体が革命的なのだ)
公威は楯の会隊員を閲兵しながら、そう自負した。
場内を一周し、ベールに包まれていたその軍容を公開した楯の会隊員は、観閲主賓の碇井順三陸将に敬礼した。
碇井陸将は本日のパレードに気乗り薄だった。観閲官の証である中折れ帽子を頭に載せることを渋っていた碇井陸将を、説得したのは山本一佐だった。自若泰然と閲兵に臨む碇井陸将は過日山本一佐に電話をかけ、
「中折れ帽子を被ってくれとの要望が三島さんからあったが、どういうことだ。楯の会は自衛隊ではないぞ」
と苦言していた。山本一佐は、
「余り深く考えられずともよいと思います。民間人のセレモニーなのですから」
等と宥めすかして、今日の式典となった訳である。楯の会隊員に返礼をする碇井陸将は、神妙そのものだった。
楯の会隊員達は、やがて公威の前に整列した。公威は楯の会隊長として、訓示を垂れた。
「三年前、私はある志に駆られ、自衛隊の門を一人で潜った。自衛隊で受けた訓練は、御国の為の崇高な訓練で
あり、その渦中で培われた人間関係は、昭和元禄の今日では到底築く事の出来ない誠真なものでした。私はこう
公威は楯の会隊員を閲兵しながら、そう自負した。
場内を一周し、ベールに包まれていたその軍容を公開した楯の会隊員は、観閲主賓の碇井順三陸将に敬礼した。
碇井陸将は本日のパレードに気乗り薄だった。観閲官の証である中折れ帽子を頭に載せることを渋っていた碇井陸将を、説得したのは山本一佐だった。自若泰然と閲兵に臨む碇井陸将は過日山本一佐に電話をかけ、
「中折れ帽子を被ってくれとの要望が三島さんからあったが、どういうことだ。楯の会は自衛隊ではないぞ」
と苦言していた。山本一佐は、
「余り深く考えられずともよいと思います。民間人のセレモニーなのですから」
等と宥めすかして、今日の式典となった訳である。楯の会隊員に返礼をする碇井陸将は、神妙そのものだった。
楯の会隊員達は、やがて公威の前に整列した。公威は楯の会隊長として、訓示を垂れた。
「三年前、私はある志に駆られ、自衛隊の門を一人で潜った。自衛隊で受けた訓練は、御国の為の崇高な訓練で
あり、その渦中で培われた人間関係は、昭和元禄の今日では到底築く事の出来ない誠真なものでした。私はこう