剣と日輪
 義兄弟のような二人は銭湯でゆったりと垢を落とそうと、脱衣場に入った。
 必勝は真新しい肌着を手提げ袋より取り出すと、
「もうこれはいらん」
 と呟いて、着ていたシャツとパンツをぽいっとゴミ箱へ捨てた。
「勿体無いなあ。未だ使えそうなのに」
「下着は何日か着たら捨てる事にしてるんだ」
 必勝は如何にも粋に、使い捨ての美学を鼻にかけている。
「羨ましい!」
 と憧れながらも、
(一体どういう生活しとんのか)
 と心裏で驚異する茂がいる。
「まあ、気にすんな」
「ええけど」
 必勝と茂は裸体になり、どっぷりと湯船に浸った。必勝の裸身はボディビルダーの如く鍛錬されている。必勝は茂の下脇腹を抓(つね)った。
「何すんのや」
「茂。御前体全然鍛えてないな」
「ほっといてくれ」
「何をするにしても体が資本だぞ。今からでもいい。腹筋と腕立て伏せ位は、毎日欠かすな」
「そうなん」
 茂は生返事である。
「でないと腹が切れんぞ」
「切らんわい」
 二人は何処で飲むか話し合った。必勝が、
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