剣と日輪
(親の第六感とは大したものだ)
と思わぬ展開に面食らいながらも、両親を知らないと言っていい必勝には、ぐさっとくるものがあった。
(これは駄目だ。田中は諦めよう)
息子を危地へ赴かせまいとする田中の父の憂惴(ゆうずい)に、必勝はあっさりと負けた。
「御父さん御心配なさらずに。僕は近くまで来たので、田中君に会いたかっただけです。じゃあ、又東京で待っていると伝えてください」
田中の父の憂(ゆう)虞(ぐ)は治まらないらしい。
「大丈夫。息子さんを危険な目にあわしたりしません。天地神明に誓って」
「そうですか」
やっと田中の父の硬化は和らいだ。
「信じていますよ」
「はい。任せてください」
必勝は胸を叩いた。
「じゃあこの度のことは、田中君には黙っていてください」
「そう願えれば」
「じゃ、これで。御邪魔しました」
「いえ、こちらこそ失礼を」
「いえ、当然です。では」
「お構いしませんで」
必勝は玄関を辞した。門外に出ると吐息した。
(田中はいい親を持っていやがる)
必勝は煙草を蒸(ふ)かしながら、駅を目指していく。
(あいつには親孝行をさせねば。親の居る奴は国へ帰れ。親の居ない俺は、死んでもいい)
必勝は両親の温もりを記憶していない半生に、
と思わぬ展開に面食らいながらも、両親を知らないと言っていい必勝には、ぐさっとくるものがあった。
(これは駄目だ。田中は諦めよう)
息子を危地へ赴かせまいとする田中の父の憂惴(ゆうずい)に、必勝はあっさりと負けた。
「御父さん御心配なさらずに。僕は近くまで来たので、田中君に会いたかっただけです。じゃあ、又東京で待っていると伝えてください」
田中の父の憂(ゆう)虞(ぐ)は治まらないらしい。
「大丈夫。息子さんを危険な目にあわしたりしません。天地神明に誓って」
「そうですか」
やっと田中の父の硬化は和らいだ。
「信じていますよ」
「はい。任せてください」
必勝は胸を叩いた。
「じゃあこの度のことは、田中君には黙っていてください」
「そう願えれば」
「じゃ、これで。御邪魔しました」
「いえ、こちらこそ失礼を」
「いえ、当然です。では」
「お構いしませんで」
必勝は玄関を辞した。門外に出ると吐息した。
(田中はいい親を持っていやがる)
必勝は煙草を蒸(ふ)かしながら、駅を目指していく。
(あいつには親孝行をさせねば。親の居る奴は国へ帰れ。親の居ない俺は、死んでもいい)
必勝は両親の温もりを記憶していない半生に、