剣と日輪
 といった眼光を向けた。
「いや。車が要るんじゃないかと思って。何かの役に立つかも」
「そうだな。よく気がついた」
 公威は小賀を褒(ほ)めた。
「よし。車も買おう。決起用の車だ」
 三隊員の内、運転免許証を持っているのは小賀だけである。
「自分が運転します」
 小賀は名乗り出た。
「うん。それがいいだろう」
「ちぇ。戦車の運転なら自信あるんだが」
 必勝が悔しがった。
「俺も免許ないからなあ」
 小川も口をへの字に結んだ。
「よし。骨子はこれでいこう。後は具体案を一つ一つ検討するだけだ」
 公威はそう結び次回の会合日時を、
「二週間後。同じく山の上ホテルで」
 と約束して散会したのだった。 

 翌二十二日日米安保条約の固定期限が満了し、
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」
 は自動延長となったのである。約七十七万の共産主義・無政府主義者が狂騒したが、
「六十年安保」
 の様な社会全体の混迷は見られなかった。
 共産主義・無政府主義者が繰返すテロの愚行や、共産主義国家の暗黒政治の実態に、国民は何時までも騙され
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