剣と日輪
 と称えたのだった。
 楯の会隊員は現在八十八名に及ぶ。今春社会人となった数名も、OB班として定例会には出席している。関西の隊員も同様である。隊員の在籍大学は京都、慶応義塾、明治、東京外国語、同志社等三十一校に迄波及している。楯の会は屡(しばしば)マスコミに、
「三島由紀夫の有志学生結社」
 として取り上げられ、地元の新宿区を楯の会隊員が制服を着て練歩いても、違和感は無くなってきている。
 ポケットマネーで楯の会を遣り繰りしている公威にとって、この団体が世間に認知され、隆盛期を迎えようとしているのは喜ばしい。反面楯の会の運営費が、公威の私生活を財政的に圧迫しているのは、厳しい現実なのである。公威の執筆量、マスコミへの登場頻度は以前の倍以上となっている。エッセイや取材、雑文の類が主流となり、小説は、
「豊饒の海」
 一本という仕事振りだった。
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