剣と日輪
 という話題になった。席上京都から来ている倉田賢司が、
「楯の会隊員数名で市ヶ谷駐とん地を取り、自衛官と国民に我々の主張を訴えかけて後、全員腹を切ればいい」
 とぶち上げた。皆が、
「そりゃあいい」
 と賛述する中で、必勝は倉田を瞿視(くし)している。
「何でそう思う?」
「我々は少数だ。自衛隊幹部も当てにならん上は、せめてその胸を借りて、国民に、自衛隊員に諫死するしか手が無いやないか」
「御前、見かけによらず、切れるな」
「早速隊長に提案してみては」
 祖国防衛隊員でもある鶴見友昭が、提議した。
「否。駄目だ」
 必勝は言下に蹴った。
「何でだ。倉田の名案だぞ」
 必勝は矇(もう)然(ぜん)と、
「死に急ぐな。軽挙妄動は慎め」
 と答えにならぬことを口走った。
「そうかな」
 気色ばむ鶴見を、
「御前、本当は何もかも見透かしとるんじゃないか」
 と必勝は制した。
「何の話だ」
「分からんのか」
「分からん。言え」
< 360 / 444 >

この作品をシェア

pagetop