剣と日輪
「いいとも。実は私の出世作仮面の告白を昭和二十三年十一月二十五日正午から執筆したのさ。謂わば作家三島由紀夫の誕生日と言える」
「そうだったんですかあ」
必勝は意味合いに得心してしまった。
「作家三島由紀夫の誕生日に、我々は一心同体となり、昇華される訳だ」
小川が紹興酒を舐めた。
「他に希望日があれば聴くぞ」
公威は四名を見渡した。ふと、
(若者を四人も道連れにしても、よいものか)
と慙愧(ざんき)の念が浮んだ。誰も異議はないようだった。
「俺は三島作品はチンプンカンプンやけど、隊長は尊敬しています。是非十一月二十五日にお供させてください」
「御前は俺が死ななかったら、俺を殺して御前も死ぬだろう」
「はい。よくご存知で」
「こいつ、ぬけぬけと」
「森田らしい」
古賀の一言に、座は弾けた。
「介錯を頼む」
必勝は、
「はい!」
と答拝(とうはい)している。
(御国のためとはいえ、前途ある若者を死なせてよいものか)
公威の心状(しんじょう)には尚も迷想(めいそう)が渦巻き、それは晴れることは無かったのである。
「今夜は飲もう」
「おうっ」
「そうだったんですかあ」
必勝は意味合いに得心してしまった。
「作家三島由紀夫の誕生日に、我々は一心同体となり、昇華される訳だ」
小川が紹興酒を舐めた。
「他に希望日があれば聴くぞ」
公威は四名を見渡した。ふと、
(若者を四人も道連れにしても、よいものか)
と慙愧(ざんき)の念が浮んだ。誰も異議はないようだった。
「俺は三島作品はチンプンカンプンやけど、隊長は尊敬しています。是非十一月二十五日にお供させてください」
「御前は俺が死ななかったら、俺を殺して御前も死ぬだろう」
「はい。よくご存知で」
「こいつ、ぬけぬけと」
「森田らしい」
古賀の一言に、座は弾けた。
「介錯を頼む」
必勝は、
「はい!」
と答拝(とうはい)している。
(御国のためとはいえ、前途ある若者を死なせてよいものか)
公威の心状(しんじょう)には尚も迷想(めいそう)が渦巻き、それは晴れることは無かったのである。
「今夜は飲もう」
「おうっ」