剣と日輪
「家の酒は先生のお口に合うかどうか分かりませんので、ウイスキー開けましょうか?」
「否。家の酒でいい。矢張り和食には日本酒ですよね?」
「はあ。そうですね」
公威は気勢を殺がれてしまった。
(この自衛官は、最早何も聴く耳を持たぬのだな)
公威は山本一佐の人柄に免じ、
「今夜どうしても伝えておきたかったこと」
を伝達するのを諦めた。
「ししゃもと松茸か。私は実はししゃもに目が無いんです」
「まあそうですか。どうぞお召し上がりください」
山本夫人に勧められるや、公威はししゃもを手で摘み、頭からムシャムシャと胃に流し込んだ。
「冷でいただきます」
公威は一升瓶を開け、コップ酒にして飲んだ。
「美味い」
「北海道のししゃもです」
「どうりで」
公威は二匹目も頭から丸呑みにし、あっという間に皿を空にしてしまった。どう見ても空腹であろう。
「私のもよかったら」
山本一佐が自分の分のししゃもを差し出すと、
「いいんですか」
と公威は歓喜し、再びししゃもを全部平らげてしまったのだった。
ししゃもを流し込みながら公威は十一歳の長女紀子と、八歳になる長男威一郎の近況を喋った。公威は本当に二人の子供を愛しており、子の話になると止め処が無かった。
「二人の行末のみが気懸かりだ。川端先生にもそれのみをお願いしている」
「否。家の酒でいい。矢張り和食には日本酒ですよね?」
「はあ。そうですね」
公威は気勢を殺がれてしまった。
(この自衛官は、最早何も聴く耳を持たぬのだな)
公威は山本一佐の人柄に免じ、
「今夜どうしても伝えておきたかったこと」
を伝達するのを諦めた。
「ししゃもと松茸か。私は実はししゃもに目が無いんです」
「まあそうですか。どうぞお召し上がりください」
山本夫人に勧められるや、公威はししゃもを手で摘み、頭からムシャムシャと胃に流し込んだ。
「冷でいただきます」
公威は一升瓶を開け、コップ酒にして飲んだ。
「美味い」
「北海道のししゃもです」
「どうりで」
公威は二匹目も頭から丸呑みにし、あっという間に皿を空にしてしまった。どう見ても空腹であろう。
「私のもよかったら」
山本一佐が自分の分のししゃもを差し出すと、
「いいんですか」
と公威は歓喜し、再びししゃもを全部平らげてしまったのだった。
ししゃもを流し込みながら公威は十一歳の長女紀子と、八歳になる長男威一郎の近況を喋った。公威は本当に二人の子供を愛しており、子の話になると止め処が無かった。
「二人の行末のみが気懸かりだ。川端先生にもそれのみをお願いしている」