剣と日輪
と一子秀頼の前途を憂いながら果てた、太閤秀吉の晩年を思わせる口振りであった。
公威の我が子に注ぐ情愛に、山本一佐は複雑な思いをしていた。実はこの日長男夫婦が、近所のアパートに転居していったのだ。当節流行の共稼ぎ夫婦であり、クリスチャンでもあった長男夫婦と山本一佐の間にはジェネレーションギャップの厚い壁が立ちはだかっていた。何度も争論した末の、結末だった。山本一佐は正直に家庭不和の現状を、表に出した。
「子供なんて大きくなってしまえば、一人で大きくなったような面をして、親を煙たがる。そんなに気にかけるようなもんじゃないです」
山本一佐の、
「親の孤独」
話に公威は、
「そんなもんですか」
と相槌を打つ外無かったのだった。
何時の間にか時計の針は、十一時を指していた。公威は、
「いかん。長居をしてしまった」
と腰を上げた。公威も山本一佐も酔面のまま、玄関へ移動する。
「御帰りですか。又のお越しを待っております」
料亭の女将宛らに、山本夫人が見送りに来た。
「では又」
山本一佐が玄関先で一礼した。
「今日は御邪魔しました。失礼します。タクシー拾って帰ります」
公威も礼を返した。山本夫人が通迄付いて行き、タクシーを拾ってくれた。
「お世話になりました」
「又どうぞ」
「はい」
公威の我が子に注ぐ情愛に、山本一佐は複雑な思いをしていた。実はこの日長男夫婦が、近所のアパートに転居していったのだ。当節流行の共稼ぎ夫婦であり、クリスチャンでもあった長男夫婦と山本一佐の間にはジェネレーションギャップの厚い壁が立ちはだかっていた。何度も争論した末の、結末だった。山本一佐は正直に家庭不和の現状を、表に出した。
「子供なんて大きくなってしまえば、一人で大きくなったような面をして、親を煙たがる。そんなに気にかけるようなもんじゃないです」
山本一佐の、
「親の孤独」
話に公威は、
「そんなもんですか」
と相槌を打つ外無かったのだった。
何時の間にか時計の針は、十一時を指していた。公威は、
「いかん。長居をしてしまった」
と腰を上げた。公威も山本一佐も酔面のまま、玄関へ移動する。
「御帰りですか。又のお越しを待っております」
料亭の女将宛らに、山本夫人が見送りに来た。
「では又」
山本一佐が玄関先で一礼した。
「今日は御邪魔しました。失礼します。タクシー拾って帰ります」
公威も礼を返した。山本夫人が通迄付いて行き、タクシーを拾ってくれた。
「お世話になりました」
「又どうぞ」
「はい」