剣と日輪
公威は車中の人となり、帰路を進んだのである。
居間で寝巻に着替えつつ山本一佐は、拒絶した公威の、
「どうしても言いたい事」
の内容を吟味してみたが、
(聴いたところで、どうにもなるものでなし)
と結論付けて、睡魔に身を任せたのだった。
翌日夕飯を終えた瑤子に、公威は突然家族旅行を宣言した。
「瑤子。十月三十日の金曜日と三十一日は空けとけ。皆で京都へ行く」
「えっ」
公威は瑤子が歯痒くなるほどの、綿密な計画性を持っている。これまで一度も急な家族旅行などした試しがなかったので、疑心暗鬼にかられたのである。
「何か予定があるのか?」
「いえ。ただ学校はどうするんです?」
「休ませればいい」
「わあい」
「京都だ」
威一郎と紀子は正々堂々と学校が休め、旅行に出掛けられると知って、歓声を上げた。
「学校には何て」
「ありのままを言えばいい。言いにくかったら僕が言ってやろう」
「そうですか。お願いします」
「京都って何処?」
威一郎が瑤子に尋ねた。
「百年前迄日本の首都だった所。綺麗な街よ。お母さんも好き」
居間で寝巻に着替えつつ山本一佐は、拒絶した公威の、
「どうしても言いたい事」
の内容を吟味してみたが、
(聴いたところで、どうにもなるものでなし)
と結論付けて、睡魔に身を任せたのだった。
翌日夕飯を終えた瑤子に、公威は突然家族旅行を宣言した。
「瑤子。十月三十日の金曜日と三十一日は空けとけ。皆で京都へ行く」
「えっ」
公威は瑤子が歯痒くなるほどの、綿密な計画性を持っている。これまで一度も急な家族旅行などした試しがなかったので、疑心暗鬼にかられたのである。
「何か予定があるのか?」
「いえ。ただ学校はどうするんです?」
「休ませればいい」
「わあい」
「京都だ」
威一郎と紀子は正々堂々と学校が休め、旅行に出掛けられると知って、歓声を上げた。
「学校には何て」
「ありのままを言えばいい。言いにくかったら僕が言ってやろう」
「そうですか。お願いします」
「京都って何処?」
威一郎が瑤子に尋ねた。
「百年前迄日本の首都だった所。綺麗な街よ。お母さんも好き」