剣と日輪
 十一月四日から六日迄、公威と必勝、小川、古賀、小賀の五名が参加した楯の会四十五名のリフレッシャーコースが、陸上自衛隊富士学校滝ヶ原分とん地に於いて実施された。
 公威と必勝にとって密やかな楯の会との永別の機会である。公威も必勝も何度もここには通い、自衛官、楯の会隊員との結束、友誼(ゆうぎ)を培ってきた。それも今回がファイナルなのだ。公威も必勝も、
「もう二度と、辛苦も喜びも埋めてきた風光明媚なこの地に戻る事は無い」
 と確定しているだけに感慨も一入(ひとしお)だった。
 最終夜、御殿場の旅館、
「御殿場別館」
 にて別れの宴が催された。山海の珍味を食しながら会は盛り上がり、公威は、
「唐獅子牡丹」
 を高唱し、別辞に代えたのである。

義理と人情を 秤にかけりゃ
義理が重たい 男の世界
幼なじみの 観音様にゃ
俺の心は お見通し
背中(せな)で吠えてる 唐獅子牡丹
 
親の意見を 承知ですねて
曲がりくねった 六区の風よ
つもり重ねた 不孝のかずを
なんと詫びよか おふくろに
背中(せな)で泣いてる 唐獅子牡丹



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