剣と日輪
おぼろ月でも 隅田の水に
昔ながらの 濁らぬ光
やがて夜明けの 来るそれまでは
意地でささえる 夢一つ
背中(せな)で呼んでる 唐獅子牡丹
(作詞水城一狼・矢野亮。作曲水城一狼。キングレコード)

 東映やくざ映画、
「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」
 の主題歌を、公威は高倉健ばりに聴かせた。映画の主人公はやくざだが、汚いやくざの暴虐に怒りが爆発し、本拠地に斬り込みをかける、というストーリーである。正にこれから公威がやろうとしている暴発の一面を穿(うが)っていた。
 必勝が、
「いよっ、けんさん!」
 と呼掛けると、公威はホクホク顔だった。公威の一番好きな俳優は鶴田浩二だが、高倉健はその次にファンである。
 両人の、
「男気」
 を滲ませる演技が、公威にはたまらなかったのだ。
 次いで必勝が、
「花」
 と、
「加藤隼戦闘隊」
 を絶唱した。


< 374 / 444 >

この作品をシェア

pagetop