剣と日輪
 と公威の来訪を心待ちにしたのだった。
 午後六時、鳥割烹料亭新橋末げんに五名は参会し、宴を張った。七畳半の奥の間五番に陣取り、
「わの一万五千円コース」
 を注文した。
 公威は二日前にも弟千之一家、家族と共に来店していた。
「余りにも美味かったから、今度は学生を連れて来ました」
 公威はそう主人に照れていた。
「有り難うございます。腕によりをかけますので、ごゆるりと」
「楽しませてもらいます」
 公威が床の間を背にするや、仲居の赤間百合子等が鳥鍋のコース料理を、次から次へと運んできた。
「豊」
 を名乗る赤間が公威のコップにビールを注ごうとすると、公威は遠慮し、手酌をした。ビールは七本用意されている。
 五名皆がビールを片手にしたところで、
「さあ食え。明日のために」
 と公威が乾杯の音頭をとった。
「明日のために乾杯」
 必勝は一気にコップを空にした。
「ところで森田さん、何処へ行ってたんだ?」
 小川は必勝に酌をしながら、尋ねた。
「一寸ね」
「これのとこでしょう?」
 古賀が小指を立てる。
「ははっ。そんなとこだ」
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