剣と日輪
裁かれるかが予測できる。
「不法監禁、嘱託殺人、傷害、銃刀法違反、建造物侵入」
 等の罪名が頭に浮ぶ。前途ある青年を監獄生活の憂目にあわせることに、公威は今や躊躇いはない。
(しっかり刑期を勤め、裁きの場で我等の憂国の志を開陳して欲しい)
 と願うだけだった。

 午後十時入浴を終え、就寝するのみとなった公威は、父母の住まう木造家屋へと歩歩していった。梓は洋館嫌いで、
「日本家屋以外には、住みたくない」
 とリクエストしてきたので、平岡家は公威親子の居住する超モダンな洋館と、梓夫妻の住まう木造住宅が、廊下でドッキングしている構造になっている。
 梓が座敷で一服していると、公威がテラスより入ってきたのだった。公威は毎晩父母に、
「お休み」
 を述べに来る。それが常よりも早い時刻に、然もテラスから入室してきたので梓は、
(おや)
 と疑沮(ぎそ)した。
「どうした」
「おかあさんはいないの?」
「ああ。今日は結婚式があってな。もうじき帰るだろうよ。待っとけ」
 梓は、
「御茶でも飲むか?」
 と湯呑をとろうとした。
「いえ。いいです」
 公威はこういう時、大体屈託の無い笑い話をしてくれる。梓は談笑したくてうずうずした。
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