剣と日輪
 木枯しの舞う秋冷(しゅうれい)に制服のみで外出しようとする小川に、古賀が問い掛けた。
「ああ」
「燃えてるなあ」
 小賀がそう冷やかすと、三人は微笑みながら外へ出た。時刻は午前八時四十五分を指していた。

 必勝は純白の褌(ふんどし)を取り出すと、下半身につけ始めた。起きたての同室者田中健一に、
(おや?)
 と疑雲が走った。
(パンツしかはいた事の無い森田が、どうしたことだ)
 田中は、
(昨日の言伝(ことづて)といい、今朝の褌といい、何か有るな)
 と気になったが、口には出さない。立ち上がると、
「緩(ゆる)いよ」
 と褌の結び目をきつく締め直してやった。
「有り難う」
「いや」
 それだけで、二人の会話は成立したのだった。
 必勝は褐色の楯の会の制服、制帽、それに腰に特殊警棒を吊るすと、
「行って来る」
 と田中に言い残して、戸を開けた。
「頑張れよ」
「うん」
 必勝は旭日(あさひ)に照らされた。
(今日は暑くなりそうだ)
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