剣と日輪
(先生がこれ程強いとは思わなかった)
一人で十名を相手にし、次々に撃払っていく師の勇姿に必勝が気を取られた一瞬の隙を、寺尾二佐は見逃さなかった。寺尾二佐は背中と右腕から血を滴らせながらも、必勝からナイフを掠め取ったのだ。
「あ」
必勝は取られて気付き、ナイフを取り返そうとしたが、寺尾二佐は戦利品を固く握り締めたまま、退却してしまった。
「しまった」
必勝は地団太を踏んだが、辺りを見渡せば敵影は無い。
「追っ払ったぞ」
公威は息一つ乱れていない。物足りなそうにさえ見える。四名の楯の会隊員達は事実上一人で十二名の自衛官を敗退させた隊長の武威に、改めて打たれた。
(正に文武両道に秀でた英傑だ)
皆自分達の隊長を誇らしく感じ、
「決起」
の成功を確信したのである。
自衛官側はリーダーの山崎陸将補が公威の剣刃に左の背中を割られ、戦線を離脱せざるを得なくなった。替わって吉松一佐が、指揮を執る破目になっていた。幕僚副長室へ下がったものの、負傷者は山崎陸将補を筆頭に、川辺二佐、笠間二曹、中村二佐、清野一佐、高橋二佐、、寺尾二佐と七名に及び、戦力が半減したので、最早力による解決は諦めた。
「三島さんを説得しよう」
という結論に達し、吉松一佐が総監室の正面ドアの窓を破砕して、
「我々は兄弟同然ではないか。何故このような暴挙に出る。言い分があれば言論でくればいいでしょう」
と提言した。
一人で十名を相手にし、次々に撃払っていく師の勇姿に必勝が気を取られた一瞬の隙を、寺尾二佐は見逃さなかった。寺尾二佐は背中と右腕から血を滴らせながらも、必勝からナイフを掠め取ったのだ。
「あ」
必勝は取られて気付き、ナイフを取り返そうとしたが、寺尾二佐は戦利品を固く握り締めたまま、退却してしまった。
「しまった」
必勝は地団太を踏んだが、辺りを見渡せば敵影は無い。
「追っ払ったぞ」
公威は息一つ乱れていない。物足りなそうにさえ見える。四名の楯の会隊員達は事実上一人で十二名の自衛官を敗退させた隊長の武威に、改めて打たれた。
(正に文武両道に秀でた英傑だ)
皆自分達の隊長を誇らしく感じ、
「決起」
の成功を確信したのである。
自衛官側はリーダーの山崎陸将補が公威の剣刃に左の背中を割られ、戦線を離脱せざるを得なくなった。替わって吉松一佐が、指揮を執る破目になっていた。幕僚副長室へ下がったものの、負傷者は山崎陸将補を筆頭に、川辺二佐、笠間二曹、中村二佐、清野一佐、高橋二佐、、寺尾二佐と七名に及び、戦力が半減したので、最早力による解決は諦めた。
「三島さんを説得しよう」
という結論に達し、吉松一佐が総監室の正面ドアの窓を破砕して、
「我々は兄弟同然ではないか。何故このような暴挙に出る。言い分があれば言論でくればいいでしょう」
と提言した。