剣と日輪
吉松一佐は功力一佐に、
「駐とん地内の全自衛官を十二時までに、一号館車寄せの前庭に集合させてくれ」
と指示した。
然しながら吉松一佐は、市ヶ谷会館に集合しているという楯の会隊員を駐とん地に合流させなかった。警視庁には既に、十一時十二分に通報してある。今頃市ヶ谷会館には自衛隊幹部と警視庁のデカが向っているだろう。市ヶ谷会館と市ヶ谷駐とん地は五十メートル程しか離れていない。楯の会はテロ集団に成り下がった。国家の反逆者として討伐せねばならない。公威の要求書によれば市ヶ谷会館の楯の会隊員達は無関係らしいので、吉松一佐としては彼等前途有る若者達を事変に巻き込みたくなかったのも事実である。
(どうしてこんなことになったのか)
自衛隊と楯の会、それに警視庁は共産主義・無政府主義者から日の本の国を護持する共同体である筈だった。
(どこで歯車が食い違ったのか)
吉松一佐は公威討滅に燃えながらも、歯痒さを噛締めていた。
警視庁公安第一課は通報を受けるや、警備局長室に臨時本部を設置。機動隊一二○名と刑事を市ヶ谷会館と自衛隊市ヶ谷駐とん地に向わせていた。
市ヶ谷会館で暢気にカレーをかっ食らっていた楯の会隊員達の間にも、次第に振動が走り始めていた。五十メートル先の異変にざわめきが起り始めた頃自衛隊幹部が現れ、
「諸君は此処を動かぬように」
と睨みを利かせた。
隊員達は隊長も班長も姿を見せず、自衛官、次いで警視庁係官が自分達に、
「一歩も此処を出てはいけない」
と求めたので、大動揺していた。
「一体何が起っているのか」
田中健一にはぴんときていた。今朝の必勝のただならぬ気色が、脳裡を過ぎった。
(あいつ、暴発したな!)
「駐とん地内の全自衛官を十二時までに、一号館車寄せの前庭に集合させてくれ」
と指示した。
然しながら吉松一佐は、市ヶ谷会館に集合しているという楯の会隊員を駐とん地に合流させなかった。警視庁には既に、十一時十二分に通報してある。今頃市ヶ谷会館には自衛隊幹部と警視庁のデカが向っているだろう。市ヶ谷会館と市ヶ谷駐とん地は五十メートル程しか離れていない。楯の会はテロ集団に成り下がった。国家の反逆者として討伐せねばならない。公威の要求書によれば市ヶ谷会館の楯の会隊員達は無関係らしいので、吉松一佐としては彼等前途有る若者達を事変に巻き込みたくなかったのも事実である。
(どうしてこんなことになったのか)
自衛隊と楯の会、それに警視庁は共産主義・無政府主義者から日の本の国を護持する共同体である筈だった。
(どこで歯車が食い違ったのか)
吉松一佐は公威討滅に燃えながらも、歯痒さを噛締めていた。
警視庁公安第一課は通報を受けるや、警備局長室に臨時本部を設置。機動隊一二○名と刑事を市ヶ谷会館と自衛隊市ヶ谷駐とん地に向わせていた。
市ヶ谷会館で暢気にカレーをかっ食らっていた楯の会隊員達の間にも、次第に振動が走り始めていた。五十メートル先の異変にざわめきが起り始めた頃自衛隊幹部が現れ、
「諸君は此処を動かぬように」
と睨みを利かせた。
隊員達は隊長も班長も姿を見せず、自衛官、次いで警視庁係官が自分達に、
「一歩も此処を出てはいけない」
と求めたので、大動揺していた。
「一体何が起っているのか」
田中健一にはぴんときていた。今朝の必勝のただならぬ気色が、脳裡を過ぎった。
(あいつ、暴発したな!)