AVENTURE -君の名前を教えて-
あぁ…だから街中で、ぜんぜん騒がれなかったのか。


今にして思えば、トランにしても、アヤにしても。
街中で誰一人として、騒ぐ人はいなかった。


普通に考えたら、一刻の王子様がそこらへん歩いてたら、少しは騒ぎになるよね。


たとえそれが普通だったとしても、誰も騒がない、なんてことはないだろう。

「真実を知って、シエラが傷つくのが怖かった。だから俺は、今の今まで、カトレア様の用意した嘘をそのまま放置し、君に真実を告げるつもりはなかった」

トランの表情が曇る。

「…いや、違う。君が傷つくことだけじゃない。本当は、俺も怖かったんだ」

トランは深々と頭を下げた。

「俺みたいな人種は、人に受け入れてもらえないことが多い。真実を告げて、君が俺のことを、カトレア様のように切り捨てるのが怖かったんだ」

その言葉に、シエラははっとなる。

「君は本当に魅力的な人だ。さっきも言ったが、君のことが好きなんだ。だけど、真実を告げて、もし、君が受け入れてくれなかったら?もし、カトレア様のように、俺のことを切り捨てて、最初からいなかったかのように扱われたら?そう思うと、怖くて本当のことを、話すことができなかった」

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