AVENTURE -君の名前を教えて-
「…分かった」

泣くのはなんだか悔しいから、ぐっと堪える。
でも、少しでも気を抜いたら涙が一気に溢れてきそうで、アイツの顔を見ることが出来なかった。

「悪いな」

本当にそう思っているのかと思えるようなコイツの態度と声に、私はギュッと唇を噛み締めた。

「だからさ、悪いけど旅行には一緒に行けねーから」

荷物も何も持っていない目の前の男に、私は軽く殺意を覚える。

「見りゃわかるわよ。その代わり、今さらキャンセルなんてできないんだから、飛行機代とホテル代はちゃんと出してよね」

「…あぁ」

小さく溜め息をつきながら、銀行の封筒を差し出してくる。ひったくるようにして封筒を受けとると、一瞥して私は反対方向に向く。

「…オシアワセニ」

今の自分が言える、精一杯の嫌みを口にすると、封筒の中身を確認することもせず、バッグの中に突っ込み、私はゲートへと向かった。




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