QUARTET
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俺は再び一人っきりになった事に気付いた。
特に寄り道する理由も思いつかず、コンビニで弁当とマンガ雑誌を買って家に帰る。
親から与えられた、7畳1Kのアパート。
築年数もそんなに古くなく、綺麗な建物だ。
エントランスには、誰が置くのか小さな鉢植えがいくつか置いてある。
階段を上がって、一番奥の角の部屋。
茶色いドアを開けると、すっかり自分の匂いの染み付いた空間が広がる。
キッチンの冷蔵庫から飲みかけのお茶を取って、部屋に入る。
先週凛子が片付けてくれたのに、もう床には服や雑誌が転がっている。
カバンを適当に床に置いて、ガラステーブルにコンビニの袋とお茶を置く。
制服は脱いでハンガーに掛ける。
しわになった制服のズボンを見ると、凛子がぷぅっと頬を膨らますからだ。
それはそれで可愛いんだけど、怒った顔より笑った顔のがやっぱ可愛いし。
代わりに、今朝床に脱ぎ捨てたスウェットを着て、ベッドに身を投げた。
見上げた天井は真っ白で、静かすぎる室内は個独心をかきたてる。
(あぁ…会いてぇな…。)
柄にもなく、そんな事を想う。
今日、ついさっきまで一緒にいたのに。
俺、結構クールでTHE男みたいな奴だって自負してたんだけど。
意外にそうでもなくね?
っつうか案外女々しい…?
新事実にショックを受けつつ、俺の心は穏やかだ。
目をつぶれば真っ先に好きな女の顔が浮かぶ。
俺の生活がこんなにも凛子でいっぱいなのには、それなりに訳がある。