ボーイフレンド
男友達
1
男女間に友情が成り立つかと聞かれたら、私は間違いなく『イエス』とそう答える。
街角でアンケート用紙を渡されて同じ質問をされたら、間違いなく『イエス』を大きく丸で囲むだろう。
「……ん」
「お。起きたか。もう出るから。鍵はいつものように新聞受けに放り込んどいて」
「…ん。さんきゅ。いってらっさい」
ぼさぼさの頭を掻きつつ、出勤していく家主を見送る。床に脱ぎ捨てたジーンズに手を伸ばし、仰向いて腰を浮かせた器用な体勢でそれを履いた。
昨日。職場で嫌なことがあった私は一晩中、この部屋の家主である男友達に愚痴を聞いてもらった。おまけに酒を振る舞ってもらって手料理も作ってもらった上に、夜遅いからと、ここに泊めてもらったのだ。
「んー、頭いた……」
勝手知ったる他人の部屋。小型の赤い冷蔵庫を開け、中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。
本人は一滴も酒を飲まないくせに、冷蔵庫の半分を占める缶ビール。
それらは全部、この部屋を訪れる友達のために買い揃えてあるものだ。イタリアン料理店のシェフでもある家主なのに、その他の食材は、ちょっとした野菜の欠片ぐらいしか見当たらない。
この部屋の家主の名前は山田太郎。嘘みたいな本当の名前だ。
女の子を待ち望んでいた末に山田家の四男として生まれたのが家主で、女の子を待ち望んでいた母親は家主を最後に、女の子の誕生を諦めた。その結果、なんとも残念な名前になってしまったらしい。
私たち、仲間内ではタロウと呼んでいる。
ちなみにタロウの三人の兄の名前は、それぞれ、陸、海、空だ。
私がタロウと初めて会ったのは、今から8年前のとある暑い夏の日。今も働いているカジュアルショップに、ふらりと入って来たギターを背負った生意気な高校生がタロウで。
その尖った見た目が私が当時好きだったバンドのメンバーそのもので、いらっしゃいませよりも先に、
「ねえ、君。もしかしてブランキー好き?」
そう声をかけた私の一言が、今も悪戯に続く腐れ縁の始まりだ。
街角でアンケート用紙を渡されて同じ質問をされたら、間違いなく『イエス』を大きく丸で囲むだろう。
「……ん」
「お。起きたか。もう出るから。鍵はいつものように新聞受けに放り込んどいて」
「…ん。さんきゅ。いってらっさい」
ぼさぼさの頭を掻きつつ、出勤していく家主を見送る。床に脱ぎ捨てたジーンズに手を伸ばし、仰向いて腰を浮かせた器用な体勢でそれを履いた。
昨日。職場で嫌なことがあった私は一晩中、この部屋の家主である男友達に愚痴を聞いてもらった。おまけに酒を振る舞ってもらって手料理も作ってもらった上に、夜遅いからと、ここに泊めてもらったのだ。
「んー、頭いた……」
勝手知ったる他人の部屋。小型の赤い冷蔵庫を開け、中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。
本人は一滴も酒を飲まないくせに、冷蔵庫の半分を占める缶ビール。
それらは全部、この部屋を訪れる友達のために買い揃えてあるものだ。イタリアン料理店のシェフでもある家主なのに、その他の食材は、ちょっとした野菜の欠片ぐらいしか見当たらない。
この部屋の家主の名前は山田太郎。嘘みたいな本当の名前だ。
女の子を待ち望んでいた末に山田家の四男として生まれたのが家主で、女の子を待ち望んでいた母親は家主を最後に、女の子の誕生を諦めた。その結果、なんとも残念な名前になってしまったらしい。
私たち、仲間内ではタロウと呼んでいる。
ちなみにタロウの三人の兄の名前は、それぞれ、陸、海、空だ。
私がタロウと初めて会ったのは、今から8年前のとある暑い夏の日。今も働いているカジュアルショップに、ふらりと入って来たギターを背負った生意気な高校生がタロウで。
その尖った見た目が私が当時好きだったバンドのメンバーそのもので、いらっしゃいませよりも先に、
「ねえ、君。もしかしてブランキー好き?」
そう声をかけた私の一言が、今も悪戯に続く腐れ縁の始まりだ。