君は天使-短編集-
ある日俺は嫌になった。
母親が泣くところを見たくなかったのだ。
母親は俺を殴ったあと泣く。
俺が殴られるせいで、母親は泣いてしまう。
俺のせいで。
だから殴られたくなかった。
言い換えれば、殴られないようにしなければならなかった。
避けられれば…
もし俺が母親の手を避けられれば…
そう思った。
テレビでみたヒーローのように…
さっとかわして…
かわしたことで俺が母親を救うのだ。
助けたい。
母さんを助けたい。
それだけだった。
本当にそれだけだったのだ。