君は天使-短編集-
しばらく呆然としていた。
ただ立ち尽くして何時間も経った気がした。
だけど時計の針は動くことはなく、どれほどの時間が経ったかわからない。
それから俺は母親の悲鳴とともに我に帰ったのだった。
母親からすれば、突然息子が消えたように見えたのだろう。
俺は母親の前に顔を出した。
は母親はなぜかドライヤーを持った俺を見て、頭を抱えそのまま寝室に行ってしまった。
やった……
俺は殴られずに、母さんを泣かせることもなくやり過ごした。
その時の俺の心は感動に満ちていた。
今でもあの瞬間は忘れられない。
それから俺は、その時を止めるという不思議な力を徐々に使いこなすようになっていった。
母親は泣かなくなった。
それを見て俺はなんだか、母親に自分の力を褒められているような気がしていた。