君は天使-短編集-
完全にやってしまった。
ボールが当たると思った瞬間、俺は時を止めてしまった。
こうなるとかなり面倒な事態に陥る。
まず、このまま時を止めたままにしておくわけにはいかない。
しかし、時を元に戻せばボールは確実に俺に当たる。
別にボールを当たらなくすることも出来る。
簡単だ。
時が止まっている間にボールが当たらない位置に移動すればいいだけ。
だが時を戻したとき、厄介なことになる。
バスケをしている連中から見れば、俺は瞬間移動したかのように見えてしまう。
それは大変マズイ。
残された道は一つ。
ボールが当たると分かっていながら、何の移動もせずに時を再び動かすことだ。
俺は静かに覚悟を決めた。
その時だった。
あの女
―桐山は現れたのだ。