君は天使-短編集-
真っ黒な髪をさらさらとなびかせ、教室に入ってきた桐山。
彼女は教室に入るなり、
「驚いた?」
と、言った。
俺は何も言えなかった。
初めてだった。
時間を止めているのに動いている人を見るのは。
「なんで…」
唖然とする俺を見て、桐山は声を出して笑った。
「自分だけが特別だとか思ってた?」
それから彼女は俺の前に近づくとボールを片手で弾き飛ばした。
「私も使えるの。その能力。」
「えっ……」
「正確には、あなたの能力と私の能力は2つで1つ。」
2つで1つ…?
「どういうことだ。」
「あなた、今までどうやって止めた時間をまたまた動かしてたの?」
「どうって…しばらく経ったら勝手に時間が動いたんだよ。」
「勝手に?そんなはずないでしょ?」
「本当だって。」
「じゃあなんで今時間が止まったままなの?あなたが時を止めてからけっこう時間が経ってるのに。」