君は天使-短編集-




真っ黒な髪をさらさらとなびかせ、教室に入ってきた桐山。


彼女は教室に入るなり、


「驚いた?」


と、言った。




俺は何も言えなかった。


初めてだった。


時間を止めているのに動いている人を見るのは。






「なんで…」


唖然とする俺を見て、桐山は声を出して笑った。


「自分だけが特別だとか思ってた?」





それから彼女は俺の前に近づくとボールを片手で弾き飛ばした。


「私も使えるの。その能力。」


「えっ……」


「正確には、あなたの能力と私の能力は2つで1つ。」


2つで1つ…?


「どういうことだ。」


「あなた、今までどうやって止めた時間をまたまた動かしてたの?」


「どうって…しばらく経ったら勝手に時間が動いたんだよ。」


「勝手に?そんなはずないでしょ?」


「本当だって。」


「じゃあなんで今時間が止まったままなの?あなたが時を止めてからけっこう時間が経ってるのに。」




< 38 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop