君は天使-短編集-
「ねぇ、藤くん。」
「何?」
「私たち、何なんだろうねー。」
桐山が青い空に向かって両手を広げ伸びをした。
「そうだな。」
「藤くんはその能力必要だと思う?」
「俺は…」
必要…
そうでもないな。
もう、母親はいない。
「もう…いらないかな。」
「そっか。」
桐山は空を見上げて言った。
「私もさ、もう大丈夫って思っても、やっぱり傷は癒えてないんだよ。」
桐山につられて俺も空を見上げる。
「だけどね、いつか癒える日が来たらいいな。」
「来るよ。」
俺は空を見上げたまま言った。
「俺も桐山も…いつか苦しくなくなる。そしたら…きっとこの能力は消えてなくなって…俺たち普通になるんだ。」
桐山はしばらくの沈黙の後、
「そうだね。」
と言った。