君は天使-短編集-
「やっぱり動いてた方がいいな。」
俺は無意識の内にそう言っていた。
世界は時間によってその姿を変えて行く。
今まで意識はしてなかったが、その変わっていく様が、今は素晴らしく綺麗に見える。
時間を止められる俺はその能力と引き換えに、大事なものを失っていたらしい。
―瞬間―
それは無限にあり、どれ1つとして同じものがない。
一瞬で過ぎ去ってしまうもの。
俺はそれを無理やり壊してしまっていた気がした。
「俺、もうこの能力は使わない。」
「えっ?」
桐山が俺の方を見た。
「使わないでいたら、この能力は消える気がするんだ。」
「……。」
「それに、俺が能力使わなかったら桐山の能力も使えないだろ。」
「藤くん…」
「二人でこの能力を消すんだ。そんで、一緒に傷も消す。」
今度は俺が桐山の目を見た。
「消える日がきたら…その時は俺の昔の話、聞いて欲しい。」