君は天使-短編集-
桐山はしばらく俺を見つめ返した後、口を開いた。
「うん。…私の話も聞いて欲しい。」
「もちろん。」
雲は風に吹かれ、青い空に模様を描く。
車の音がする。
鳥が頭上を空高く飛んでいく。
下から生徒たちの声が聞こえる。
「……あ!」
しまった!
かなり大事なことに気がついた。
「桐山、お前何てことしてくれた。」
「へっ?」
教室でバスケをしていた連中…
あいつら今ごろどうしているだろう。
きっと大騒ぎだ。
藤が消えたぞ!
って。
「あぁ、どうしよう!」
桐山も気がついたようだ。
…教室に戻るの面倒だな。
「よし、帰るか!」
「えっ、いいの?」
「いいよ。…桐山も帰るか?」
桐山は笑顔で頷いた。
「うん!…カバン取ってくる。」
桐山は階段を降りていった。
カバンか…
俺は取りに行けないな。
時間を止めれば取りに行けるけど…
別にいい。
カバンなんてどうせ大したもの入ってないんだから。