泣かないで。
次の日の朝。
あたしはいつもより早く目が覚めて、また布団の中にもぐった。
まだ朝は来なくていい。
まだ、まだ・・・・
まだ幸せなままでいさせて・・・。
きっと、今日も悪魔で残酷な日々が待っているのだろう。
だったらまだこないで。
あたしは願った。
叶わない願いだとは分かっていたが、窓から差し込んでくる眩しい光が嫌になった。
あたしは進まない足を無理矢理リビングへと動かしていた。
そこの食卓には、お父さんとお母さんがいた。
「おはよう」
あたしは満遍なく笑顔で振舞っていた。
「おはよう。実柚」
お父さんが笑いながら話しかけてきた。
椅子に腰をかけると、あたしは箸もとらずに
「ジュースだけでいい」
と言った。
食欲がなかった。
「あ、そうか」
と言いあたしのコップにオレンジジュースを注いだ。
「ありがとう」
あたしはかすかに笑い、コップの中のジュースを一気に飲んだ。
そして席を立ち上がった。
「行って来ます」
あたしは返事が聞こえたのと同時にドアを閉めた。