図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

ゆっくりとドアを開ける。

そこは相変わらず、音のない世界。

今は授業中だから、人の気配すらない。

足を踏み入れた瞬間、手の中のものが振動する。

蓮は慌ててそれを確認した。

文字の羅列を追いかけて、その意味を確認して、動きが止まる――。

そして、微かに震える唇がやっと言葉を紡いだ。



「・・・・・やったぁ・・・」




小さな声のはずなのに、室内に響く蓮の声。

蓮はすばやく携帯を操作し、耳元に当てた。

聞こえてくる音楽。

早く早く――――

気持ちばかりが焦る。

音楽がとまり、短い沈黙。


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