図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
蓮は待った。
何千と言う本に囲まれ、音を出さずに。
そして、音のない世界に小さな音が生まれた。
ドアが開く音。
それに続き小さな声。
「蓮くん?」
美優はゆっくりと入ってくる。
首を左右に振りながら。
蓮はいきなり後ろから手を伸ばし、美優を抱きしめた。
「きゃっ、蓮く・・・」
声を上げる美優の口をすかさず蓮は手で覆った。
蓮は振り返り、司書室につながるドアを見つめた。
人影がないことを確かめ、ゆっくりと美優の口に置いた手を外す。
腕の中で見上げる美優に、蓮は人差し指を立てて唇に当てる。
「図書室、でしょ?」
口の端をあげる蓮に「もう!」といいながらも美優はいつもの笑顔を蓮に向けた。
「おめでとう」
どうしても、直に伝えたかった言葉。
「ありがとう」
美優が小さな声ではにかむように笑う。
蓮はゆっくりと顔を近づけると、美優は頬を赤く染めてゆっくりと目を瞑る。
そして、重なる唇。