図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
ガチャッ
ドアの開けられた音が室内に響く。
「誰かいるの?」
さっきの事務員の声だった。
カツッカツッカツ・・・・・・。
足音が響きわたる。
事務員は本棚の間を歩いた。
首を左右に振り確かめる。
人気はまるでなく、一番奥までたどり着いて――。
パタンッ
後ろでドアの閉まる小さな音に振り向いた。
その方向は廊下に続くドア。
けれど、やはりだれもいなくて、首を傾げた。
「気のせいかしら?」
事務員は独り言のようにつぶやき、また部屋に戻っていく。
図書室の隅には二本のタイが重なり合うように落ちていた。