図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「お姉さん、何組?」
新が蓮の横をすり抜けて彼女の顔をのぞき込んだ。
「えっ、3組だけど・・・」
彼女は困ったように下を向いて答える。
「なんで、上って・・・」
蓮の言葉を遮るように祐介が彼女の襟元を指さした。
そこにあるのは学年章。
色は青、それは3年生を示す。
蓮たちは2年生なので赤。
1年生は黄色。
でも、付けている生徒は少ない。
というか。
「付けてるやつ、初めてみた」
呟く蓮に構わず新は立て続けに質問する。
「名前は?あっ、俺、向井新」
そして、祐介が入り込む。
「俺は柴田祐介ね。で、こいつが」
「篠宮蓮」
祐介の言葉を裂いて、蓮は自分の名前を名乗った。
「あ、あたしは、相原美優」
「そんじゃ、美優ちゃん、駅まで?」
「ちょっ、なんでお前が!」
勝手に話を進める新の襟首を蓮が後ろに引っ張る。
「ぐえっ!って何すんだよ?」
咳き込みながら蓮を睨む新。
「ごめんねぇ?美優ちゃん、こんな馬鹿ばっかで」
祐介がにっこり笑って、美優の手を取った。
「祐介ぇ!慣れ慣れしいだろ!」
すかさず蓮が後ろから祐介に蹴りを入れば「っと、なんだよ!」と掴みかかる祐介。
そんな3人の言い合いを美優は見ながらクスクス笑っていた。
「じゃあ、みんなで行きましょ?」
その笑顔に3人の動きが止まるから、美優は不思議そうに首を傾げた。
漆黒の髪は揺れ、街灯の光を反射させる。
「じゃ、俺、美優ちゃんの隣!」
新が一番に手を挙げ美優の右側に。
「俺も!」
祐介はその反対側に。
「・・・・あー、なんだよお前ら!」
最後まで美優に見とれていた蓮が、遅れを取った。