図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
クリスマスツリーをいくつも横切り、ネオンの下を歩く。
「綺麗だね」
美優の言葉に蓮は「うん」とだけ答えた。
吐く息は白い。
外気にさらされた顔は冷たいのに、
つながれた手だけが暖かくて、思わず口元は緩んでしまう。
けれど、駅までの道のりは短い。
「じゃあね」
美優が俯いて呟く。
つながれた手が離れた途端、冷気に支配される。
「美優」
美優が顔を上げる。
その顔は儚げで・・・。
「電話するから」
優しく笑う蓮に美優も答えるように微笑む。
それから、黒髪を翻し改札口に向かった。
蓮はただ、ゆれる黒髪を眺めていた。