図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
明日から登校日。
明日になれば会える事を知っているけれど、待てなくて・・・・・・。
蓮は駅で美優を待つ。
待ち時間までまだ30分もあるというのに。
「早く来過ぎ・・・・だよな?」
蓮は自嘲した。
日はあるけれど、空気は冷たく携帯を握る手も悴む。
蓮は自販機でホットコーヒーを買い、手を温めた。
「蓮!」
その声に振り向くと、欄が立っていた。
「よう、なにしてんの?」
蓮のその台詞に欄は顔を歪ませた。
「なんか、もっと気の利いた台詞はないの?」
蓮は、ははっと乾いた笑いの後、缶をあけ一口飲んで少し意地悪な笑顔を見せる。
「新しい男は見つかったか?とか?」
欄は口を膨らませ、蓮の腕の中にするりと入ってきた。
「ムカつくわね!」
そういうと、蓮の手の中にあるコーヒーに口をつけ、一口飲んだ。
「おーい」
呆れるような蓮の声に欄は「ふんっ」唇を尖らせて髪を翻し、蓮の腕の中から出て行った。
「蓮だけ幸せなんてムカつくわ」
そんな捨て台詞とご丁寧にべーっと舌を出して、街中の雑踏に消えていった。
「幸せだけどね」
蓮はそう呟きまた、一口コーヒーを口にした。