図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


「蓮くん」


その声に蓮の心臓は飛び上がる。


「美優」


蓮は振り向きながら名前を呼ぶ。

美優はいつものように笑っていた。

だから、蓮は安堵する。

見られていないと。

やましくはないけれど、欄との関係を聞かれるのは、気持ちのいいものではなかったから。

勿論、聞かれればただの友達と答える。

それでも、引っかかるものはあるわけで。


蓮は飲みかけのコーヒーをゴミ箱に放り込み、その手を差し出した。

一瞬、躊躇する美優に蓮はドキッとしたが、そのまま置かれた手のぬくもりに救われた。



< 137 / 205 >

この作品をシェア

pagetop